オフシーズンレビュー、AFC南地区

ディフェンスの主力を多数失ったコルツ

 スーパーボウルチャンピオンの宿命とも言うべき主力の流出は、昨年の王者インディアナポリス・コルツにも起こった。スーパーボウルに先発したLBケイトウ・ジューンCBニック・ハーパーCBジェイソン・デイヴィッドを筆頭に、Sマイク・ドスLBギルバート・ガードナーDTモンテイ・リーガーRBドミニク・ローズと少なくない主力選手がチームを去った。特にディフェンス陣の移籍が目立っているコルツだが、一方でQBペイトン・マニング率いるオフェンス陣はRBローズ以外でこれといった戦力の流出もなく、リーグ屈指の破壊力は今年も健在だ。昨季も喪失ヤードでリーグ21位、中でもラン喪失ヤードはリーグ最下位とディフェンス陣の調子は良くなかったコルツだが、連覇を達成するには昨季以上にオフェンス陣の奮闘が必要となるだろう。

 2年連続のプレーオフ進出を逃したジャクソンビル・ジャガーズは、Sドノヴィン・ダリアスディオン・グラントTEカイル・ブレイディらベテラン勢を放出し、若返りを断行した。ジャガーズの一番の課題はパス攻撃であり、その改善へ向けクリーブランド・ブラウンズの快足WRデニス・ノースカットミネソタ・ヴァイキングスレシービングTEジャメイン・ウィギンズの2人を獲得している。特に過去3年連続でレシーブ46回以上をあげているウィギンズには、ショートパスのメインターゲットとして期待が集まる。

エースQBとRBと補強したテキサンズ

 AFC南地区の中で最も大きな戦力補強を行ったのは、ヒューストン・テキサンズだ。今オフに入り、結果を残すことができなかった2002年ドラフト全体1位のQBデイヴィッド・カー、故障続きだったRBドマニック・ウィリアムズと攻撃の中心2人を放出。代わりにアトランタ・ファルコンズの2番手QBだったマット・シュアブを、新エースQBとしてトレードで獲得。さらに、グリーンベイ・パッカーズのマルチRBアーマン・グリーンをFAで加入させた。また、昨季の守備新人王であるLBデメコ・ライアンズなど有望な若手ぞろいの守備陣には、経験豊富なベテランLBショーン・バーバーダニー・クラークを加え層を厚くした。2002年のチーム創設以来シーズン負け越しを続けているテキサンズだけに、今季こそは勝率5割の壁を突破したい。

 タイタンズは、サラリーキャップ削減のためもあり昨季ランでチームトップのRBトラヴィス・ヘンリー、レシーブでチームトップのWRドリュー・ベネット、チーム2位のWRボビー・ウェイドと攻撃陣の主力を一気に失った。また、守備バック陣の主力であるCBアダム・ジョーンズも1年間の出場停止処分で今季はプレイできない。守備バック陣は、コルツのCBニック・ハーパーシアトル・シーホークスCBケリー・ハーンドンらを補強しているが、攻撃陣では大きな即戦力の補強はなし。2年目のQBヴィンス・ヤングの負担は大きくなるだろう。

レイダーズ、ベテランSダリアスを獲得

  オークランド・レイダーズが、Sドノヴィン・ダリアスを獲得した。昨季2勝14敗に終わったレイダーズだが、ディフェンスは全体でリーグ3位、パスディフェンスに関してはリーグ1位の好成績を残していた。31歳のダリアスは、スチュワート・シュウェイガートと先発Sの座を競うことになる。また、レイダーズ守備バック陣は先発CBが2003年ドラフト1巡ナムディ・アソムーガと2005年ドラフト1巡フェイビアン・ワシントン、残りの先発Sは昨年のドラフト1巡マイケル・ハフと若手揃いであることから、彼にはユニットのまとめ役としての働きも期待されている。

 1998年のプロ入りから昨季までジャクソンビル・ジャガーズに所属していたダリアスは、「レイダーズは、新しいコーチングスタッフ、選手たちと一緒に正しい方向へ向かっている組織だと感じている。俺はこのチームに加入するという挑戦について楽観的だ」と、意気込みを語っている。レイダーズレイン・キフィン新ヘッドコーチは、2000年にジャガーズでディフェンスのクオリティコントロールコーチを務めており、「彼はチームに競争力を持ち込んでくれ、守備バック陣に柔軟性を与えてくれる。ドノヴィンは、ハードワークの良い見本であり、献身的な姿勢で試合に挑んでくれる。ジャクソンビルにいた時、彼は驚異的な競争者だった。チームの哲学にぴったりの選手だよ」と、ダリアスの加入を歓迎している。

堀ら日本人は選ばれず、NFLの外国人練習生

 現地時間7月9日(月)、アメリカンフットボールの米国プロリーグNFLNational Football League:ナショナル・フットボール・リーグ)は、NFLヨーロッパ2007シーズンに参戦した外国人選手の中から、NFLインターナショナル・プラクティス・スクワッド(外国人練習生、IPS)を発表。IPS枠は昨年の8名から大きく増加され、11名が選出された。なお、先日、このIPS枠を飛び越え、アトランタ・ファルコンズと通常のルーキーFA契約を結んだ木下典明立命館大卒)以外の日本人選手4名からは選出がなかった。

 2004年に開設されたIPS枠は、毎年、NFLヨーロッパに参戦した外国人選手の中から数名を選出。フィジカル、メンタル面をはじめ、英語力、フットボール技術、年齢などの将来性、そしてシーズン中の活躍を含めた様々な観点から総合的に選考し、NFLチームに練習生として配属させるもの。選出された選手は、7月末から始まるNFLトレーニングキャンプ、9月から開幕するNFLシーズンと、特別な事由がない限り解雇されることはない。1シーズンを通してチームに帯同することが保証されるので、翌年のNFLロースター入りに向け、強力なアピールの場を手にする。また、IPS選手は練習生とはいえ、1000万円近い収入を得る。

WRストークリー、故障からの復活へ

 デンバー・ブロンコスの新加入WRブランドン・ストークリーが、昨年12月にアキレス腱を損傷して以降では初めてフィールドに復帰し個人練習を行った。過去4年間インディアナポリス・コルツに所属していたプロ9年目のストークリーは、「トレーニングキャンプのための準備へ向けて、小さな一歩を刻んだ感じだ。俺はチームのみんなと同じことが出来ると感じているけど、復帰へ向け慎重に動いている」と語っている。昨シーズン開幕からケガに苦しんでいたストークリーは、12月10日のジャクソンビル・ジャガーズ戦でアキレス腱を損傷し残りシーズン絶望となった。結局わずか4試合出場、レシーブ8回85ヤード、1TDとチームのスーパーボウル制覇にほとんど貢献できず、それがコルツから放出される要因となった。

 31歳のストークリーは、「新しい組織、チームでプレーすることを楽しく感じている。不安な気持ちはあるけれど、フィールドに立つことができて興奮している」と、新天地ブロンコスでの第一歩についてコメント。さらに「昨季の俺はほとんどプレーしていなかった。試合に出たら負傷し、復帰したらまた負傷していた。昨年はとても辛い1年で、ケガから回復するまで長い時間がかかった。今は、とても気分が良いよ」と、故障も癒え消化不良に終わった昨季の雪辱を誓っている。今季のブロンコスWR陣だが、チーム歴代1位のレシーブ数を記録しているロッド・スミスが臀部の負傷から回復途中であり、昨季チームトップのレシーブ1,084ヤードをあげたジャヴォン・ウォーカーと2年目の若手ブランドン・マーシャルを先発WRに起用予定。ストークリーは、3番手WRとしての活躍が期待されている。

オフシーズン注目ポイント、CAR、CHI

カロライナ・パンサーズ

 大きな失望に終わった2006年だが、パンサーズはかつてチームをスーパーボウルに導いたQBジェイク・デロームに全幅の信頼を置いている。彼らは、今年のドラフトで将来のフランチャイズQBと成り得るブレイディ・クィンを獲得できる全体14位指名権を保持していた。しかし、クィンを指名する代わりにニューヨーク・ジェッツと指名権交換のトレードを行い、クリーブランド・ブラウンズが彼を指名した。

 パンサーズは、ドラフト前にヒューストン・テキサンズから放出された2002年ドラフト全体1位指名のQBデイヴィッド・カーを獲得している。だが、カーはプロ入りしてからテキサンズやほかのNFLチームが、かつて彼に期待していたような実績を残すことはできなかった。チームはカーが自信を取り戻し、戦術を会得するまで少なくとも1年間は控えQBとしてサイドラインに置きたいと考えている。もし、カーがシーズン序盤から登場し、残り試合で先発QBを務めることになった場合、パンサーズはドラフトで将来のフランチャイズQBを指名しなかったことを後悔するだろう。

シカゴ・ベアーズ

 ベアーズは、オフェンスの起爆剤となっていたRBトーマス・ジョーンズをトレードでジェッツに放出した。チームは交換にドラフト2巡指名権を獲得している。2巡という交換条件の内容云々よりも、サラリーキャップ削減のためベアーズはこのトレードを行う必要があったようだ。昨シーズン安定感を欠いていたRBセドリック・ベンソンだが、ジョーンズが移籍したことによりエースRBとしてランの大半を彼が担うことになる。

 LBランス・ブリグズは、チームの中で最も能力の高い選手の1人だが、フランチャイズ選手に指定されたことが不満でホールドアウトを続けている。長期契約を望んでいるブリグズだが、契約の主導権はベアーズが握っている。彼にできるのは、フランチャイズ選手の待遇を受け入れ1年720万ドル(約8億6500万円)でプレーするか、今シーズンを全休するかだ。両者は現在も長期契約に向けての交渉を行っている。しかし、もし何も状況が変わらなかった場合、彼が今季の試合出場を選択したとしても、プレーに集中しこれまでと同じ活躍を見せることができるか、誰にも分からない。もし、彼がシーズン中もホールドアウトを続けたら、ベアーズ守備陣にとって大きな損失となる。

殿堂入り式典のプレゼンターが決定

 8月4日にオハイオ州カントンで開催される殿堂入り式典で、殿堂入りを果たす人物の紹介を行うプレゼンターが決定した。2007年殿堂入りのジーン・ヒッカーソンマイケル・アーヴィンブルース・マシューズチャーリー・サンダースサーマン・トーマスロジャー・ウェールリは、それぞれ元同僚、コーチ、所属チームのオーナーらを自分のプレゼンターに選んている。

 元同僚がプレゼンターを務めるのはヒッカーソンマシューズウェールリの3名。ヒッカーソンは大学で2年間、NFLで7年間チームメイトだったボビー・フランクリンマシューズは10年間チームメイトで、5年間彼のポジションコーチだった殿堂入りGマイク・マンチャックウェールリは、4年間ともにプレーした殿堂入りSラリー・ウィルソンを選んだ。そして、トーマスバッファロー・ビルズ時代の指揮官だった殿堂入りコーチのマーヴ・リーヴィアーヴィンダラス・カウボーイズジェリー・ジョーンズサンダースデトロイト・ライオンズウィリアム・フォードと共にプロ入りから引退まで所属したチームのオーナーをプレゼンターに選択した。

 

今年の殿堂入りメンバーの主な実績

 

ジーン・ヒッカーソンG、1958−73年クリーブランド・ブラウンズ

オールNFL5回、プロボウル6回選出

 

マイケル・アーヴィンWR、1988−99年ダラス・カウボーイズ

プロボウル5度選出、キャリア通算レシーブ750回1万1,904ヤード、65TD。 1995年リーグ記録となるシーズン11試合でレシーブ100ヤード。

 

ブルース・マシューズGTC、1983−2001年ヒューストン・オイラーズテネシー・タイタンズ

オールプロ9回、プロボウル14回選出(Gで9回、Cで5回)。

 

チャーリー・サンダースTE、1968−77年デトロイト・ライオンズ

オールNFL3回、プロボウル7回選出。キャリア通算レシーブ336回4,817ヤード、31TD

 

サーマン・トーマスRB、1988−99年バッファロー・ビルズ、2000年マイアミ・ドルフィンズ

1991年リーグMVP、プロボウル5回選出、8年連続シーズン1,000ヤードラン。 プロ通算ラン2,877回1万2,074ヤード、65TD、レシーブ472回4,458ヤード、23TD

 

ロジャー・ウェールリCB、1969−82年セントルイス・カーディナルズ

オールプロ5回、プロボウル7回選出。キャリア通算40インターセプト、19ファンブルリカバー

木下、ファルコンズ公式サイトに登場!

 アトランタ・ファルコズと2年契約を結び、7月末から始まるトレーニング・キャンプに参加する木下典明立命館大卒/24歳)が、ファルコンズの公式サイトで大々的に紹介された。

 ファルコンズの公式サイトは、木下との契約について「Falcons sign Japanese-born wideout Kinoshita」と題した記事を掲載。木下のNFLヨーロッパでの活躍を伝えたほか、ボビー・ペトリーノヘッドコーチが木下に高い関心を示していることを紹介。また、NFLヨーロッパでオールNFLヨーロッパに選出されたことも報じられている。

 ちなみに、ファルコンズのユニホームに袖を通す、日本人は木下で2人目。2000年にTE安部奈知が10日間限定の契約を結び、トレーニングキャンプに参加した。